第1199話 法定相続分で分ける場合の遺産分割協議書の必要性
相続が開始したら、亡くなった方の遺産は、相続人が承継することになります。
法律上は、法定相続を原則とし、遺産分割を例外と考えていますので、法定相続分のとおりで遺産を分ける場合にも、あえて遺産分割協議書を作る必要はあるのでしょうか?
民法では、相続人が相続する割合を定めています。これを法定相続分と言います。
法定相続分は、民法900条で定められていますので、もし法定された相続分のとおり遺産を分け合うのであれば、特段の遺産分割協議を行う必要はありません。この条文の分け方が原則だからです。もし、この法定相続分以外の割合で、遺産を分割する場合には、遺産分割協議を行い、その協議の結果を書面にした「遺産分割協議書」を作成することになります。
法定相続分の割合で相続財産を分割する場合でも、あえて遺産分割協議書を作ることは可能です。別に法定相続分で分けるからといって遺産分割協議書を作ってはいけない法律はありませんので、任意的に作ることは差し支えありません。
例えば、被相続人が所有していた預貯金3000万円を、兄弟3人(法定相続分は各3分の1)が3等分する場合には、法定相続分通りですから遺産分割協議書を作る必要はありませんが、任意的に「兄弟3人で3等分する」旨の遺産分割協議書を作成しても問題ありません。
相続した預貯金を解約する場合、各金融機関のHPを見てみると、ほとんどで「遺産分割協議書」が必要書類に含まれています。それを見ると、金融機関には遺産分割協議書の提出が必須と考えてしまいそうですが、相続した預貯金の解約自体は、遺産分割協議書がなくてもできますので、法定相続人全員が手続きに協力すれば、問題なく被相続人の預貯金を解約して分け合うことが可能です。
前述したように、法定された割合で相続財産を分け合うような場合は、遺産分割協議書を作る必要はありません。しかし、法定相続分の割合であっても、遺産分割協議書を作った方がいい場合も存在します。
それは「法定相続分の割合で相続することに相続人全員が納得しているという証明のため」です。遺産分割協議書には、相続人全員が署名捺印(実印)をするため、その遺産分割協議書は法定相続分で分割したことに相続人全員が納得している証明になります。遺産分割協議書を作っておけば、相続手続き後のトラブルを回避することができます。
法定相続分の割合で分ける場合には、遺産分割協議書がなくても、金融機関(銀行や証券会社)では問題なく、相続手続きを受理してくれます。しかし、受理側としては、遺産分割協議書があった方が相続する人が明確になり、余計な判断をしなくていい分、手続きをスムーズに進めることができます。
特に、証券会社が被相続人から相続人へ移管する際の手続きでは、遺産分割協議書がないと別途の書類に署名捺印を求められることもありますので、やはり遺産分割協議書があった方が相続手続きはスムーズに進めていくことができることになります。
ただし、相続税の申告において、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例等の特例を受ける場合には、たとえ法定相続分通りに遺産が分割された場合でも、遺産分割協議書の写しと印鑑登録証明書の添付が必要となりますのでご注意ください。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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